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【侍ジャパン総括】“日本の野球”を見せられたか 足りなかったチームの引き出し

2017年3月23日 19:15配信

1次ラウンドから打ち勝ってきたが、準決勝では一流のメジャー投手陣に力で抑え込まれた(写真提供:Getty Images)

 日本は敗れた。大会前に向けられていた世間からの懐疑的な目を、1次ラウンドからの6連勝で覆して意気揚々とアメリカに渡ったが、結果的には大会前の大方の予想通りに準決勝敗退。ミスが出ての敗戦は4年前と同じだった。

 何が足りて、何が足りなかったのか。試合直後、小久保裕紀監督が「本当に悔しい負けですけど、選手はよくやったと思います」と振り返った通り、投手陣、野手陣ともに大会を通じて高いパフォーマンスを見せ、批判の多かった采配面でも今大会では大きな間違いはなかった。逆に小林誠司(巨人)、千賀滉大(ソフトバンク)といったラッキーボーイを作り出し、チームに勢いを与えた手腕に関しては素直に評価したい。

 一方で散発4安打に終わった打線に対し、「アメリカのメジャー投手陣の動くボールに対して、足を上げてタイミングを取る日本打者が対応できなかった」という指摘がある。その側面は確かにあっただろうが、「だから日本はメジャーの野球を真似るべき」という話も違うように思う。

 準決勝1試合を見ても、菅野が“動かない”綺麗なフォーシームで多くの空振りを奪い、千賀がメジャーでは希少なフォークボールで次々と空振り三振を奪ったことは事実。「どちらが上か」ということは言えず、その“違い”こそが面白いのだ。それぞれの国が異なるチームスタイルで戦い、様々な戦い方を見ることができるのが国際大会の意義であり、そのような多様性こそが大会の価値を高めることに繋がる。その意味でも、やはり日本は日本らしく、「日本の野球」で戦うべきだっただろう。

 では、今大会で日本が「日本の野球」を存分に見せることができたのか。その答えは、否だろう。大会前、小久保監督は日本の強みについて「投手陣を中心とした守りの野球」と話していたが、実際は「スモールベースボール」と言われた類のものではなく、1次ラウンドから力勝負で“打って”勝ち上がってきた。その戦いぶりは非常にスリリングではあったが、その反面、異なる試合展開となった場合の“脆さ”もはらんでいた。事実、準決勝ではそれまでとはまったく異なる試合展開となり、真っ向勝負で相手投手陣を打ち崩してきた打線が、逆に力で抑え込まれると何もできなくなった。チームとしての引き出しが足りなかったとも言える。

 天然芝、屋外球場、スタンドからの声援…。様々な要因はあったが、選手たちが「これまでとは違う」と感じながらのプレーを強いられたのは確かだ。今大会で初めて味わうストレスと緊張感の中でミスが生まれ、そのミスが勝敗に直結してしまった。せめて1次ラウンドから「1点の重要性」を再確認しながら勝ち上がることがでれば、または打線が完璧に抑え込まれる試合を経験していれば、アメリカ戦ではまた違った試合ができたように感じる。

 史上最弱と呼ばれた侍ジャパンの戦いぶりは勇敢だった。だが、結果的に世界一奪還の目標は達成できなかった。なぜ負けたのか。なぜミスが出たのか。なぜ、そのミスが勝敗に直結することになったのか。すべての野球人たちがこの敗戦に真剣に向き合うことが、日本野球の発展に必ずつながるはずだ。

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